罪か、それとも愛か
ーー大丈夫。きっと五嶋くんなら自分の力で前に進める。

「そうこなくっちゃ。大丈夫、五嶋くんならできるよ。大切な人達をその手で守って。
『一条琴羽』は全面的に協力するわ」

それが琴羽の答えだった。

「ありがとう、琴羽。君はやっぱりすごいや。冷静に判断して導いてくれた。俺なんかには釣り合わない。
君は『一条琴羽』一条家を支え、世界の頂点を飛ぶ者。俺のものになんてなるわけなかった」

「五嶋くん、今、あなたが抱いている不安や焦りを誰よりも共感してる。あなたを助けてあげたいとずっと悩んでた。
でも、だからといって形だけの結婚は違う。結婚すれば、あくまであなたの“妻”という立場であなたを支えることとなるでしょう。
私は『一条琴羽』だから飛べるの。五嶋くんの“妻”では飛べない」

「…だな。琴羽がそんな器じゃないことは俺もわかる。俺も琴羽の優しさと友情につけこんで、君の力をあてにしてしまった。
…卑怯だな、俺。ゴメンな、琴羽」


結婚は諦めてくれたようでよかった。琴羽はほっとしながら、残っていた炭酸の抜けたシャンパンに口をつけた。

「それより、五嶋くん、やっぱり大切な人がいたんだね。アメリカにいるの?どんな人?」
「CAを目指して頑張っているんだ。いつか、彼女の搭乗する飛行機に乗りたい。やっぱりさ、好きな子の前ではカッコつけたいじゃん。立派になって、ファーストクラスに乗ってドラマチックな再会!とか、いいよなぁ」

「いい夢じゃない。絶対、叶うよ。
頑張ろうね、五嶋くん」

五嶋に手を差し出す。ぎゅっと握ったその手が大きくて力強い。男の人の手だ。

でも、琴羽が一番大切な人の手とは違う。

いつも暖かく包み込んで、琴羽を守ってくれる、冬輝の手がやけに恋しい。


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