罪か、それとも愛か
「琴羽は?それだけいい女なんだから、男が黙ってないだろ」
「気が強い女はモテないの」

すっかり落ち着きを取り戻した五嶋は、そんなはずないと笑う。

「まぁ、こんな私を笑って支えてくれる奇特な男なら一人だけ。恋愛感情というか腐れ縁だけど、私にとって去られたら困る人ならいるわ」

誰かの前で冬輝が特別な存在だと認めたのは、初めてだ。琴羽に弱いところをさらけ出した五嶋へこれまで以上の親しみを感じていたからだ。

「そんな大事な人がいるのに、契約結婚の話なんて持ち出して悪かったよ。相手の男も気を悪くしただろ」
「平気よ。でも、五嶋くんのおかげで私も前に進むことができたから」
「前に…?もしかして、結婚!?」
「違う、違う。私は『一条琴羽』として生きることしか出来ない。だけど、私らしく生きながら子供を持つ人生も選択しようって。そのために、彼を利用する」
「なんか、難しくってよくわかんないけど。琴羽がそれで幸せになれるなら、俺も応援する。
なんだか、やる気が湧き上がってきた。
琴羽、また会ってくれる?仕事の相談させて?」

「もちろんよ」
「じゃ、今日の支払いは…」
「大丈夫、今日の分は私から五嶋くんへの激励で」
「マジで?ゴチになっちゃっていいの?琴羽、重ね重ねありがとう!いつか、倍返しするから!じゃあな!」

別れ際には琴羽の知る、学生時代の明るい五嶋に戻っていた。


「幸せ、か」

ママ。
親不孝なあなたの娘には幸せになる資格はない。
結局、冬輝まで巻き込んで私の罪は重くなるばかり。

それでも。
ねぇ、冬輝。
あなたがそばにいてくれるだけで。
それだけで私は生きていける。


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