罪か、それとも愛か
罪かそれとも愛か
念願
38歳の春。一条琴羽は二児の男の子の母になり、花音の第一秘書とまこと記念病院理事長の仕事を兼任し、公私共に充実した毎日を送っていた。
その夜は風が強かった。春の嵐という言葉がピッタリだ。
琴羽はスプリングコートの前を合わせて、急ぎ一条商事本社ビルを出る。
強い風に満開だった桜が花びらを散らしている。散りゆく様は美しいが、花の盛りはなんだか例年より短く感じた。忙しすぎて時間が飛ぶように過ぎてしまったからかもしれない。
急ぎの用があるというのに会議が伸びてしまった。
上着のポケットからスマホを取り出すと、子どもたちからメッセージが届いていた。
「ママ、お疲れさま!さっきおばあちゃんと病院行ってきたよ。赤ちゃん、かわいかった!
陽翔(はると)は帰りにレストランでハンバーグを食べたよ!晃翔(あきと)はお子様ランチ食べたよ!おいしかった!
今日はもう寝るね。明日いっぱいお話きいてね」
今日は忙しくて朝も会えなかったが、元気なメッセージにホッとする。