罪か、それとも愛か
「うん。理事長の仕事もあるのに、私の代理まで悪いわね……忙しいのにありがと」

「あら、悪いだなんて、花音らしくない。母になって人のことを思いやれるように、変わったのかしら?」

「まぁね。妊娠、出産が、こんなに大変だなんて思わなかった。琴羽も大変だったんだろうなって。何ごとも経験することは大事ね」

「謙虚じゃない。
じゃ経験者から言わせてもらうけど。本当に大変なのはこれからよ。一日中赤ちゃんに振り回される。
でも、一条の仕事はいくらでも代われるけど、この子のお母さんは花音だけよ。最優先は『お母さん』だからね」

「覚悟してる」

「でも、不思議と頑張れる。大好きな人との子供だし、二人で一緒に育てていける時間は宝物よ」

「そのセリフ、私じゃなくて冬輝先生に聞かせたいわ。
先生、出産に立ち会ってくれたの。すごく頼もしかった。
でもそのせいで研修会に遅れてしまったの。慌ただしくて言えなかったから、お詫びと感謝を伝えて。
ついでに、婚姻届も用意して」

「もう花音、一言余計よ」

ふくれてみせるが、頑なに否定もしない。少しだけ柔らかくなってみえたのは、気のせいではないだろう。前向きに考え始めた証拠だ。


< 237 / 252 >

この作品をシェア

pagetop