罪か、それとも愛か
色のない世界
一つ目の罪(母は悲しみの中逝った)
放課後、予備校が休みだった琴羽は夏姫と自宅で勉強することにした。
帰宅するとダイニングテーブルには父の食べかけたトーストと、琴羽が飲み干した牛乳のコップがそのままになっていた。
母は朝から忙しかったのだろう。後片付けもせずに仕事に行ったようだ。
「夏姫、先に勉強始めてて。私、朝ごはんの後片付けする」
朝、弁当の文句を言ったから、ちょっと気まずい。
汚れた食器を洗っておく。少しでも家事を手伝えば母が喜ぶかと思ったからだ。
琴羽が片付けを終えてリビングに行くと、勉強すると言いつつ、夏姫はスマホを見ていた。
「これ見て、琴羽。今流行ってるよね、このダサいダンス」
「こら夏姫、スマホ禁止。ダラダラ見ちゃうでしょ。時間の無駄」
「もー、琴羽もお兄ちゃんとおんなじこと言わないで。わかってるって。ちょっと息抜きだよぉ」
夏姫と二人で笑い合う。こんな時間が好きだ。
ふと、琴羽は窓の外に視線を移した。
眩しいくらいの夕陽が、朱く空を染めている。白く大きな鳥が沈む夕陽に向かって飛んでいく様子が見えた。
白くてシュッとした姿がなぜだか白衣を着た母を想像させる。
「見て、夏姫。あんな大きくて白い鳥が」
「本当だ。巣に帰るのかな。
今日も終わるね。受験が日一日と迫ってくるぅ。ヤバい」
琴羽はぼんやりと遠ざかる鳥影が見えなくなるまで目で追った。
昨夜、コンビニの外で湧き上がった不思議ともの悲しい気持ちが、なぜか再び胸の中をざわつかせていた。