罪か、それとも愛か
母の眠る部屋には、父と洸平がいた。

父は白衣姿のまま、憔悴しきった様子で母のそばの椅子に座っていた。


「パパ、どうして。
たくさんの患者さんを助けてきたのに、どうしてママを助けてくれなかったの!」

肩を揺すって琴羽は父を責めた。父は何も言わずに力なくただ呆然としている。


「琴羽ちゃん、翔太も頑張ったんだ。だが…」
「洸平さんはスーパードクターでしょ。神の手でどうしてママを助けてくれなかったの!」


水上洸平は、神の手と称されるほどの天才外科医だ。日本だけじゃなく世界中から洸平に助けてもらいたい患者が来る。

父を責めて、洸平を責めて。
琴羽は心の嵐のままに叫んだ。

「琴羽ちゃん、ごめんね。
まことさんを助けられなくてごめん」

唐突に洸平が、琴羽の足元で土下座をした。
まさかの土下座をする洸平にビックリし、琴羽はハッとなって息を飲む。

「ごめんな、翔太。ごめん」

洸平の声が震えてる。泣きながら額を床に擦りつけていた。

「やめろよ、洸平。お前は良くやってくれた。発見した時点で手遅れだったのに。
…ありがとう」

血の気の引いた真っ白な顔の父が、洸平の体を起こす。
洸平は、両方の目から涙をあふれさせていた。

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