罪か、それとも愛か
琴羽は、横たわる母を見つめた。

ーー本当に、ただ眠っているだけみたい。

今朝もいつもと変わらぬ朝だった。
定番の野菜の煮物と焼き魚と高野豆腐。茶色ばかりの渋いお弁当を、母は有無を言わせず持たせた。女子高生のお弁当なんだから、もっと可愛くしてと文句を言って、ふてくされながら家を出た。

母が『いってらっしゃい』と笑顔で手を振っていたのに、イライラして無視してしまった。背中越しに母のため息も聞こえていた。娘があんな態度をとることが悲しかったのだろう。


ーーあれが、最後だった……の?


そんな馬鹿な。
お弁当は手付かずのまま、まだ琴羽の通学バッグの奥底に隠してある。
忙しい母が、琴羽の健康を思い作ってくれた愛情こもった弁当。
その思いを踏みにじってしまった。
琴羽に文句を言われ、悲しい思いを抱いたまま、母は旅立ってしまった。


「ママ……。ごめんなさい。お弁当に文句を言ってごめんなさい。イライラぶつけてごめんなさい。謝るから。起きて。いつもみたいに笑って?ママ、ママ!」


「琴羽、ダメだ」

母の体を揺する琴羽を、後ろから冬輝が止める。

「冬輝、離して。ママを起こさなきゃ。謝らなきゃ」
「落ち着け、琴羽。夏姫、琴羽をしっかりつかまえて」
「夏姫、離して。二人とも離して!」

冬輝の腕から逃れようとする琴羽に、夏姫が抱きつく。

後ろからは冬輝、前からは夏姫に押さえられて、琴羽は身動きが取れない。

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