罪か、それとも愛か



駐車場にはエンジンがかかったままの見慣れた車が止まっている。
琴羽は助手席のドアを開けて車に乗り込んだ。


「ただいま」
「お疲れさん」

運転席の冬輝は笑顔で琴羽を迎えると、静かに車を走らせた。

母が来れないと知ってざわついていた気持ちが、冬輝の笑顔でスッと落ち着いていく。
冬輝の持つ穏やかな空気はいつでも琴羽を優しく包んでくれるのだ。

自宅に向かう車内は暗く、無言だった。
幼なじみの冬輝と琴羽に今さらはずむような会話はない。

先ほど大人になったと自慢していた男の子のことを話そうかと思ったがそれも一瞬。
冬輝がいるこの空間の中ではどうでもよくなってしまった。

互いがそばにいることが当たり前の穏やかな空気感。琴羽が何も考えずに気を抜ける空間がそこにあった。


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