罪か、それとも愛か


「やめるんだ、琴羽!」

冬輝はとっさにスマホを操作する琴羽の右手首を掴んだ。

琴羽の手首は、やはりひどく冷たかった。

琴羽の独り言を聞きながら、他の男に蹂躙される琴羽の姿を想像すると、身震いがした。

だが琴羽相手に、自分が『兄』ではなく『男』として反応できるのか、それはわからない。
心はひどく葛藤していた。






そんな冬輝に、琴羽は悲しみをたたえた瞳を向け、小さく微笑んだ。

ーーあと、少し。あと少しで冬輝はきっと一緒に堕ちてくれる。

「冬輝が触れたところは、あったかい。体温が戻っていく気がする」

掴まれた手首を見つめる琴羽。
だが、浮かべた小さな笑みは、次の瞬間サッと消えた。

「離して。応えてくれないなら」




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