罪か、それとも愛か
母との別れ
「琴羽!大丈夫?」
身だしなみを整えて姿を現した琴羽に、真っ先に気付いたのは夏姫だ。
「もう、大丈夫。色々ありがとう、夏姫。心配かけてごめん」
声に張りがある。キビキビとした様子はいつもの琴羽だ。
まず琴羽は、母の棺の前でぼんやりとしている父に歩み寄る。
「パパ」
父はゆっくりと顔を上げた。
乱れた前髪が額に落ちて影をつくっている。その前髪の向こうの瞳が、琴羽の姿をうつしていた。
「琴羽」
父は琴羽の手を掴むと、肩を振るわせた。
「ママさ、お別れの言葉も無く、行っちゃったんだよ。
眠ってるだけみたいだよな」
父の手は、先程の琴羽のように、ひどく冷たい。
「眠ってるだけだと、思いたいのにさ。
俺がまことの死亡確認したんだ。今までで一番残酷な瞬間だったよ。
なぁ、琴羽。無力だな、俺。
大切な人一人救えないなんてさ。俺は医者だというのに。この手は、まことの命をつなぐことが出来なかった。
俺は医師としても、家族としてもどうしようもない。まことの代わりに俺が死ねたらいい…」