罪か、それとも愛か
「たっくん、葬儀の段取りとかまだ残ってる?」
「いや、ほぼ終わった。親戚や関係各所への連絡も済んでる。あとは弔問客の対応くらいかな。それもいぶきがやってくれてるから、大丈夫だよ」
「じゃあさ、パパとご飯でも食べてきて。
たっくんになら、パパも弱音が吐けるから。
お願い。パパを助けて」


帰宅した時は、琴羽もこの世の終わりと言わんばかりに憔悴していた。
それが、今は冷静さを取り戻し、いつもの琴羽に戻っている。
頼もしい子だと、拓人は思う。まことに似て芯の強い子だ。


「翔太が俺に弱音なんて吐くかなぁ。
ま、吐かなきゃ吐かせてやるか。オッケー、琴羽、後はよろしく。困ったことがあれば、いぶきに相談して。
さ、翔太。行くぞ」
「飯なんていらない。ここに、まことの側にいる」

拓人の腕を振り切って、父はその場から動こうとしない。

「パパ、ダメ。一度、全部吐き出して。
パパは生きてる。たっくんに助けてもらって、生きる覚悟を決めて。
『一条』の人間が、いつまでもこんな状態でいてはダメ」


琴羽の言葉に、父はハッと息をのむ。
日本経済の中枢を担う『一条』は、世界にまでその名が轟く巨大グループ。その名はどこまでも気高く、強い。その名を冠する意義を、翔太は誰よりも知っている。


「拓人、体が温まるような食事と、少し酒を飲みたい」
「よし、行こう」

拓人に引き摺られるようにして、父は歩き出した。






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