罪か、それとも愛か
父を送り出して、琴羽はひっきりなしにやって来る弔問客の対応に追われた。

忙しさが、悲しみも罪悪感も忘れさせてくれた。

「琴羽ちゃん、少し休んで?」
「琴羽、おにぎり作ったよ。少し、食べよ」

いぶきと夏姫が琴羽に声をかけてくれる。それでも琴羽は手を休めない。
止まったら、もう動けなくなりそうで怖かった。

「ありがとう。でも大丈夫。今は忙しいほうがいい」

琴羽は、弔問客の為に用意しようと椅子を手にしていた。

「あ、琴羽、それ私が持つ。重いでしょ?」

手を貸そうとする夏姫に琴羽は首を横に振る。

「大丈夫だって。夏姫も疲れたでしょう?」


そんな二人の目の前からヒョイと椅子が消えた。

「これ、どこに持っていくんだ?」

椅子を持ったのは、冬輝だ。
その顔を見た途端に琴羽は言葉を失い、視線を泳がせる。先ほどの二人きりの『秘密』が生々しく頭をよぎり、まともに顔も見れない。

「あ、お兄ちゃん、遅い!着替えにいつまでかかってるのよ!」
「悪い。黒い服がなかなか見当たらなくて。夏姫、疲れただろ?少し休め。後は俺がやるから」


冬輝は、黒いVネックセーターに、黒のコットンパンツに着替えていた。泳がせた視線が捉えたそのVネックから見える鎖骨に、何故かとても色気のようなものを感じて、琴羽は慌てて目を逸らした。

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