罪か、それとも愛か
老夫婦がいぶきに追い立てられるようにこの場を去ると、琴羽は安心してふっと息を吐こうとした。だが。

「パパ、苦しい」
「あ、そうかごめん。大丈夫か、琴羽」

ぎゅっと力任せに抱きしめていた翔太は琴羽を解放する。琴羽は大きく息をついた。

「……たっくんみたいになりたいと思った。
誰にも文句言われないくらいの力をつけたいって本気で思ったよ」

悔しさと怒りで体が燃えるようだ。

母は一条家に嫁いでずっと、苦しんでいた。
今みたいに、親族らに一条家に釣り合わないと貶されることもしばしば。父や拓人は、時代錯誤も甚だしいと一蹴してくれるが、当事者だった母の苦悩は一番近くで見ていた琴羽にはよくわかる。

恋愛結婚の代償だからと、母は耐えていた。父からの愛情と琴羽の存在があれば耐えられると。

琴羽自身も男の子だったらよかったのにと言われることも多い。
だから。
女の子だからとか、一条のくせにとか、文句は言わせないくらい、強くなりたい。


「拓人みたいに?…案外なれるかもな、琴羽なら。
度胸もあるし、行動力もあるし、何より気持ちが強いからな。
一条家を背負っていく覚悟を、生まれた時から出来ているなんて、カッコいいこと言っちゃうし。
な?まこと。俺たちの娘は頼もしいな」

翔太は小さく笑みを浮かべると、再びまことの棺のかたわらに腰掛けた。


父の問いかけに、母はもう答えてはくれない。





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