罪か、それとも愛か


ぽたりと琴羽の頬に雨粒が落ちた。

ついに雨が降り始めた。空さえも母の為に泣いてくれる。
それなのに琴羽は、冬輝と溶け合うような時間を過ごしてから、一度も涙を流していない。


ふと、視線を感じた。
涙と嗚咽で一杯の会場だというのに、一人だけ、顔を伏せずに真っ直ぐ、こちらを見ている瞳がある。

冬輝だ。

泣き崩れる夏姫の体を支えてやりながらも、目だけはこちらを見ていた。涙こぼすわけでもなく、悲しみに伏せるわけでもなく、大きく見開いて真っ直ぐにこちらを見ている。

ーー見ているのは、ママの遺影?それとも…

琴羽の疑問はすぐに解ける。視線が重なったからだ。冬輝の目は真っ直ぐ琴羽を見ていた。
まるで、視線だけで琴羽を支えようとしてくれているようだ。


ずっと、頼れる兄のように思っていた。寂しい時にはそばにいてくれた。琴羽の願いを全て叶え、甘えさせてくれる、優しい兄。
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