罪か、それとも愛か
だけど、今、向かいあって立っていると現実を突きつけられる。

並んで立つ冬輝と夏姫は兄妹だ。
そしてどんなに兄のように慕っても冬輝と琴羽は他人なのだ、と。


ーー分かっているくせに。


だからこそ、冬輝にすがったのだ。
女医の娘として育った子供の自分を捨てて、一条を背負う大人として生きる為に。そして、命の温もりと重さを知る為に、冬輝の優しさを利用したのだ。

結果、冬輝には恋人を裏切る罪を背負わせて、琴羽は『妹』であることを捨てた。

それなのに、またあの腕で抱きしめて欲しいだなんて思ってしまう。冬輝の温もりを分けて欲しい。
罪悪感と喪失感が指先から熱が奪い、体の芯まで冷やしていく。一人で立っていることが辛く、寂しい。


「さぁ、琴羽」

父が先に車に乗り込んだ。拓人がその後に続くように、優しく琴羽の背を押す。


琴羽は最後に空を見上げた。

辺りが暗くなるほどに垂れ込めた灰色の雲。時折ぽたりと大粒の雨が落ちてくる。


「…ママ、ごめん」


母に言えなかったその一言を、空に向かってつぶやいて。

琴羽は、車に乗り込んだ。









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