罪か、それとも愛か
「冬輝なら、腕のいい医師になれる。
勉強、付き合ってくれてありがと。
これからは自分の為だけに時間を使って。私は、大丈夫。
やるべきことがハッキリ見えた。
あとは夢に向かって、脇目も振らずに努力するわ」

あれほどすがった冬輝から、琴羽は自ら手を離した。
心が軋むように痛んで胸が張り裂けそうだ。

「俺も、応援する。琴羽が必要ならいつでも手を貸すから。無理だけはするな。壊れてしまう前に必ず助けを呼べ。
どんな時も、俺は近くにいて、絶対に琴羽を助けるから」

冬輝の言葉が嬉しかった。冬輝はいつも琴羽の欲しいものを欲しいタイミングでくれる。
言葉も、カラダも。
冬輝の温もりに何度も救われた。心が折れそうになるたびに寄りかかり、心を全て明け渡して楽になれる、一番頼りにしていた避難場所。

だけどそんな『甘え』からは卒業だ。


「二人がいてくれる。それだけで充分よ。ありがとう。
さてと、大学の願書出さなきゃ。今なら間に合うから」

抱きついた夏姫の体を離して、琴羽は時計とカレンダーを見た。願書提出期限は今日だ。

「琴羽、どこの大学受けるの」

心配する夏姫に、琴羽は机の引き出しから大学案内のパンフレットを出して見せた。

「すごい。さすがは、琴羽。しっかりしてる。大丈夫みたいだね。
邪魔したくないからお兄ちゃん、私たちは行こう?
じゃ、琴羽、私たち帰るね。今日はうちで夕飯だよ。後で呼びにくるね」

「わかった」


帰っていく二人にヒラヒラと手を振ると、琴羽はすぐにパソコンに向かった。




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