ひとりぼっちの王子
「おかえりー!!
今日は一段と遅かったね。お疲れ様!」

帰宅すると、空羅の優しい声と笑顔が出迎えてくれる。

いつもはその顔を見るだけで疲れも吹っ飛び癒されるのだが、今日ばかりはそれが鬱陶しくさえある。

「あ!そうそう!
今日ね、晴ちゃんと西公園まで散歩したんだ~
そしたら近くに小さなカフェがオープンしてて。
今度3人で行かない?
少し中覗かせてもらったんだけど、可愛くておしゃれだったよ!
でね、そのあと━━━━━━━」
「ごめん!!!ちょっと黙ってて!!
考え事してるんだ!」


「え……あ…ご、ごめんなさい……!
じゃあ夕食用意するから、先にお風呂入る?」
いつもと違う俺の態度にびっくりした空羅は、申し訳なさそうに俺の顔を窺い言った。

「…………あぁ…そうするよ…」





シャワーを頭からかぶり、ただ…立ち尽くして浴びる。

アイツ……副社長の言葉が頭から離れない。



“妹さんに普通の生活をさせてあげたいでしょ?”



確かに晴加に普通の生活をさせてあげたい。

でも空羅を失いたくない━━━━━

悪循環のようにぐるぐると考え込み、空羅に当たってしまった。

今まで空羅にこんな態度をとったことはない。
空羅は優しく、穏やかな性格で俺や晴加を一番に考えてくれる。


だから俺も空羅には、穏やかでいられるのだ。
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