今夜はずっと、離してあげない。




赤、青、黄、橙、緑、白。

たくさんの色が、小さな先端から飛び出して光を放つ。




「……花火、久々にしました。というか、公園でしてもいいんですか?」

「大家さんに聞いたら、別にいいって」




こんな、淡々と花火をしていいのだろうか。

いや、だれも文句は言わないだろうけど、それでも味気ないとは思う。


……でも、これもいいかも。


じゅって火をつけた時の音。
火花がぱちぱち弾けて、色を灯すところ。
きれいな瞳に、鮮やかな色がきらめく刹那の時間。


そのひとつひとつを、見逃さないから。




「花火とか、する柄でしたっけ」

「……わかってて聞いてるだろ」

「はい。すみません」




くすくす笑いながら、じっと持っている花火を見つめる。


お祭りに行こうと、言ったわけではない。

花火を見たいとも、言ったことはない。


けれど、夏に旅行にも海にも行かない私に、ほんの少しのきらめきをくれる。


この人は、たぶん、そーゆー人だ。



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