今夜はずっと、離してあげない。
千井の慌てようとその内容があってない。
真生が楽しそうに喋ってたって、アイツだって人間なんだから見知った俺や千井、朝水じゃなくとも会話ぐらいするだろ。
そう言って、その場は千井の話を受け流していた。
……でも、それから一週間経った今もなお、アイツが放課後も、昼休みも、俺が教室に行く前から楽しげに話しているのを見たら、それは誰だって、心配になる、と思う。
最初はアイツによからぬ考えを持っている奴じゃないかと警戒していたけど、千井の言、それに真生本人の言葉もあって、その線はいのいちばんに否定された。
どうやら最近席替えがあったらしく、今まで葉柴の隣かつ廊下側を死守していた真生が、いきなり対角線の窓側の最後尾、つまり一番話しかけに行きづらい場所に移動してしまったことが原因らしい。
そして、真生の隣の席を運よく引き当てた幸運者が、アイツとよく話すようになった、というのがことのあらまし。