今夜はずっと、離してあげない。





「う、ぇ、やっぱり行くんですかあああああ」

「んだよ、すげえ出かけたくなさそーな声出して」

「いや出かけたくないわけじゃないですけど……なんか、すごい、ハードル高くて……」



着替えはした。布団も洗濯終了して現在乾き待ち中。

そんな準備万端の中、リビングで私はたたらを踏んでいた。



「な、なんかこう、行き交う人の大半がカップルで埋め尽くされているんだなあ、と思うとあの、気がひけると言うかあ……、」

「……ほんとお前そんなんだったか?」

「これが素です……。正直私はアクティブなあかねさんと違って万年引きこもりタイプなんですよ……」

「…………、まあそんな気はなんとなくしてたけど」

「してたんですか?!」



伽夜の勘の良さに驚きながら、自分が着ている服を見下ろした。


私が持っている中で、たぶん私が最も着ない部類であり、逆に結構気合いが入っているとも捉えられる、可愛げのある服。私が可愛くなくてもこの服は可愛い。それは断固として譲らない。


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