今夜はずっと、離してあげない。



「……あっ、手洗いですか?!」

「いやそれもだけど、それ以前にやんなきゃいけねーことあるだろ。玄関入ってスグ」

「え?……く、靴をぬぐ?」

「オマエ土足で入ってきたのか?」



なわけない。……となると。



「あっ、服についた花粉を落とす!もしかして花粉症なの?!」

「それならオマエがここに入ってきた瞬間ファブってるわ」




いきなりファブるのはよくないんじゃ……、と思いながらも、他に思い当たるものもなく。


腕を組んでもんもんと悩んでいれば、はあとため息をついた千住サマは呆れた視線を向けてきた。




「お前なあ……。挨拶わすれたのか?ふつー、帰ってきて一言目は〝ただいま〟だろ」

「えっ……、」



その一言に、ただただ目を見開いた。



「……う、」

「う?」

「うそ……。見た目不良がそんなマトモなこと言うなんて……」

「お前俺のことバカにしすぎな」



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