御曹司、家政婦を溺愛する。
「新堂くん……本当に、私でいいの?」
きっとヘリコプターの音で聞こえないだろう、小さな声で呟いた。
ヘリコプターから降りるなり、新堂隼人は私の手を握り、何も言わずに屋内へ入っていく。
連れてこられたのは、エレベーターで着いた五十三階。「ラグジュラリオス・ベリーヒルズ」のスイートルーム……だと、思う。
女性が好みそうな家具やインテリアを揃えた、落ち着いた広い部屋だ。
私の体は部屋のドアに縫い付けるように、新堂隼人の両腕によって挟まれている。
「し、新堂くん?」
眉間に皺を寄せた彼は、今度はじっと私を見る。
「高校の卒業式の日、俺はお前に聞こうとしたことがあった。その返事次第で俺は自分の進む道を決めようとした。その前にお前が姿を消したことが予想外で、ショックも大きかった」
彼の瞳はとても冷静だったが、どこか不安な感じだ。
じっと見られるその目に、私は聞いた。
「私に、何を……」
「間接的ではあったけど、お前が先だったんだからな」
言葉を被せてきた彼は、ムスッと口を曲げる。
一体、何のことかわからない私に、彼は言った。
「俺はあの日、教室で南田から聞いたことを、お前に言ってないことがある」
『新堂くん、忘れないで。鈴だってずっと辛くて苦しいの。鈴は新堂くんが、とても好きだから……!』
桜子の言葉に、私は驚いて目を開く。
「あの子……そんなことまで言っていたのね」
「鈴、今度は俺から聞く。卒業式のときに聞こうとしたことだ」
私は瞬きさえも忘れて、新堂隼人を見つめた。
「鈴、俺のこと、好きか?」
逸らせない瞳にドキドキして、もう隠し通せないと声を震わせた。
「……好きっ。んっ」
そう答えた私の口に、彼の唇が降ってきた。