あやかしあやなし
 そうなんだ、と鬼っ子は先まで寝ていた部屋を見た。確かにあの数の食事を用意するのは大変だ。
 何となく、自分は物の怪のこともよくわかっていないのだな、と鬼っ子が思っていると、厨のほうから周防が顔を出した。

『ちょいと、わちきの分は?』

「いきなり来たものの分まで対応できん。残っておろう、自分で用意してくれ」

 惟道に言われ、ぶーぶー言いながらも周防はもう一度厨に引っ込んだ。その様子を見、鬼っ子は膳を囲む面々を見た。

「人型の物の怪は、人と同じものを食べるってことなの?」

 今座敷にいる四人のうち、和尚と惟道は人間、小丸は狐のようだが、今は完全なる人型だ。

「さぁな」

 短く、惟道が答える。和尚が芋粥を啜りながら、少し首を傾げた。

「そういうことかのぅ。生きておるかどうか、が大きいような気もするの。……いや、うーん、そうでもないか。物の怪というものは、基本的には死ぬことはなかろう。稀に雛のようなものもおるが、死ぬ、というより滅する、といった感じじゃろ」

「滅せられない限りは死なないの?」

「さぁのぅ。弱ってしまうことはあろうが、やはりそれでも消滅なのではないか? 亡骸が残るものではないと思うのぅ。物の怪の亡骸など、見たことはないじゃろう?」

 言われてみればその通り。京には物の怪が溢れているというのに、亡骸など見たことはない。

「おぬしはより人に近い故、生活も人のそれと変わらぬであろう。食うものも同じ、腹も減るじゃろ」

「そのうち人を食いたくなるかもよ?」

 小丸が言うが、和尚は肩を竦めた。

「わしのような老いぼれを食うたところで腹も満たされんじゃろ。残るは惟道のみ。今一つ人らしくない惟道には、食指も動かんかものぅ。悪くすると腹を壊すやも」

 呑気に言う。
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