あやかしあやなし
「そもそも鬼は、人が好物なのか?」

「そうなんじゃないの? だからこそ、都のお姫様は拐われたんでしょ?」

 ずるずると芋粥を啜りつつ、小丸は平然とグロい話を続ける。

「拐われた姫君は帰って来ておらなんだから、そう言われておるだけじゃろ。まぁ生きておるとも思えぬが、鬼に食われた、と言われるだけで、食い散らかされた死体が見つかったわけではない。現に、こ奴の母は帰って来ておる」

「なるほどね~。じゃあ内裏にあるっていう宴の松原の鬼の噂も、単なる噂なんだね」

「内裏に鬼なんぞ住んでおったら、今頃あそこに人はおらぬわ」

 あははは~、と笑い合う。内容に反して、なかなか和やかな朝餉である。

「だが、俺の中にあった鬼は、人を食っておったぞ」

 そんな明るさをぶち壊すように、惟道が口を挟んだ。

「あれっ、そうだっけ。でもそれも、襲いかかってただけで、食ったわけではないのかもよ?」

「いや、あれは食っていた。鬼を放った部屋の中におった女子は、首の肉がごっそりなくなっておったし、胸や腹も食い破られておった。やはり柔らかいところが好きなのであろうか」

「ちょっと、具体的に感想までつけなくてもいいよ。食事中なんだからねー」

 さすがに眉をひそめながらも、箸は止めずに小丸が言う。が、惟道は気が付いたように続けた。

「下等な鬼ほど人を食うのではないか? 墓地の屍肉を漁る餓鬼もそうだ。俺の中におった鬼も、人語も操れんかったし、そう知恵のある鬼ではなかった」
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