あやかしあやなし
「ほぅ、そういえばそうかものぅ。考えてみれば、知恵のある鬼ほど人に近付くのかもしれぬ。人と鬼は、元は同じなのかものぅ」

「人も鬼も、そう変わらぬしの」

 しれっと言う惟道を、鬼っ子はまじまじと見た。気になる言葉があった。『俺の中の鬼』とはどういうことなのだろうか。
 そういえば、安倍屋敷で鬼っ子と共に物の怪狩りをやっていた青年を打ち据えていたとき、何かを降ろしたようだった。惟道は、自在に神降ろしを行えるのだろうか。

「惟道がそういう奴だからこそ、鬼っ子もやりやすいじゃろ」

 かかか、と笑う和尚に、はた、と我に返り、鬼っ子は反射的にぶんぶんと首を振った。確かに鬼も人も変わらぬ、など初めて聞いた。
 だが鬼っ子にとって、惟道は決して付き合いやすい人ではない。恐ろしく表情のない能面は何を考えているのかさっぱりだし、先の会話からも、これまでの行動を顧みても、人ならざるところがありすぎる。人だということ自体が怪しすぎるのだ。

「惟道って、どういう人なの?」

 少し姿勢を正して鬼っ子が言うと、和尚は、おや、という顔をした。

「聞いておらなんだのか?」

「だって何も教えてくれない」

「安倍の子息に会ったのじゃろう?」

「人と違う、とは言ってたけど……」

 ふむ、と和尚は顎髭をしごいた。ちろりと惟道を見る。

「引き取るのであれば、最初に自己紹介ぐらいするものじゃぞ?」

「聞かれたことには答えた。知りたいことがあれば聞けば良かろうが」

 特に鬼っ子を見るでもなく、素っ気なく言う。これに能面が加わるので、機嫌がさっぱりわからない。そもそも惟道に機嫌が良いときがあるのか。
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