あやかしあやなし
「あの、中に鬼がいたって、どういうこと?」

「そのままの意味だ」

 意を決して聞いてみるも、惟道はばっさりと切る。

「か、神降ろしが出来るの?」

「どうだろう。まぁ、俺はそういう者だから、出来るのであろうな。俺自身がするわけではないが」

「……」

 確かに聞けば答えてくれる。が、本当に聞いたことのみに答えるだけで、何の補足もない。惟道のことをさっぱり知らない者からすると、聞いたところで全然わからない答えだ。

「これこれ惟道。もうちょっと歩み寄ってやらにゃ。鬼っ子は惟道のことを聞きたいのであろうから、己のことをもうちょっと語ってやらにゃ」

 笑いながら言い、そこからは和尚が話を引き取った。

「まぁわしも、安倍の子息から聞いただけじゃがのぅ」

 言いつつ和尚は惟道のこれまでを語った。
 元々捨て子で、蘆屋道満という外法師に拾われたこと、道満は惟道をきちんと育ててくれたが、道満が亡くなると、道満の子・道仙は惟道を使用人として扱ったこと、さらには惟道に鬼を植え付け、京の都に人食い鬼を放ったこと。
 そしてそれ故、最期はその鬼に自らが食われてしまったこと。

「鬼を植え付けるなんてことができるの? 惟道が、人食い鬼になったってこと?」

「いやいや、まぁ人は結構簡単に鬼になるがの、惟道にそんな気概はないであろうよ」

 かかか、と笑いながら、和尚が言う。笑い事ではないのだが。

「惟道の中に鬼を住まわせる、というのかのぅ。まぁその頃の惟道を、わしは知らなんだが、今も額に酷い傷があるじゃろ。ここに鬼の印を描いて、上から封じの印を描いておったということじゃ。蘆屋道満はかなり強い術師じゃったしの、その子もそれなりの力があった、ということか」

「それはない」

 いきなり惟道が、ぴしゃりと口を挟んだ。

「道仙の力など、道満殿の足元にも及ばぬわ」

 吐き捨てるように言うが、和尚は首を傾げる。
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