あやかしあやなし
「かなりな呪いよなぁ。のぅおぬし、母者はどうしたのじゃ? そのようなおぬしを庇ってくれたか?」

 ぴく、と一瞬体を強張らせ、鬼っ子は下を向いた後、ふるふると首を振った。

「母上は……ほとんど知らない。産まれたおいらがこんなだったから、おかしくなったって。おいらを見るとおかしくなるから、ずっと会わせて貰えなかった。一度母上の姿が見えたから、嬉しくて飛び出したら……物凄い形相で叫ばれた。化け物、あっちへ行けって。その辺のものを投げられて、狂ったようにおいらから逃げるんだ。母上があんまり取り乱すから、おいらは屋敷から追い出された」

「まーっ! 自分で産んだくせに、何だよ、それ!」

 小丸が憤慨する。

「じゃがまぁ、姫からすると鬼に無理やり孕まされた子じゃしのぅ。それでも己の腹から産まれたのじゃから、愛情が芽生えてもおかしくはないが……」

 考えつつ言葉を紡ぎ、羽衣は、ぱしんと持っていた扇を打った。

「話してやろうかの。おぬしの父、大江山の鬼は、確かに元は人じゃった。外道丸というてな、それはそれは美男子だったのじゃよ」

「へえぇーっ! そんなことがあるんだ!」

 小丸が大声を上げ、驚きに目を見開いた。俄然興味津々である。

「寺の稚児だった故、恋文を貰っても困るだけ。そんなわけで、溜まりに溜まった恋文を護摩壇に放り込んだところ、女たちの怨念が外道丸を包み、美しかった姿を鬼に変えてしまったんじゃ」

「何だそれーっ!」

 本日二度目の小丸の憤慨である。

「大江山の鬼の誕生って、それ?」

「そう」

「えらい簡単じゃない?」

「それだけ女子の妄執が強かった、ということよ」

 呆れつつも、小丸が青くなる。
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