あやかしあやなし
「文を出した女子らを拐ったかどうかはわからんのじゃない?」

 小丸の突っ込みに、惟道は、ちら、と羽衣を見た。羽衣が、軽く肩を竦める。

「……ま、文を送る、というだけで、それなりの身分の者、とわかるではないか。だから外道丸も、貴族の姫君を狙ったのであろうよ」

「じゃあ惟道の言う通り、姫君たちからしたら言ってしまえば己らが望んだことってこと?」

「乱暴な括りにしてしまえば、そう言えなくもない」

 もっともそれは、かなり乱暴な括りだろうが。羽衣は一つ息をつき、鬼っ子をじっと見た。

「ということで外道丸は、元は確かに人だったわけじゃ。いくら呪いで姿が変わろうと、所詮人の呪いなどで人を人外にまでは変えられん。大江山の鬼も、見てくれがその辺の人と違うだけの、単なる人間じゃよ」

「こ奴の耳や頭のコブも、ただ父に似た特徴ってだけか」

 軽く納得した惟道だが、鬼っ子は首を振りつつ身を乗り出す。

「待ってよ。父上も母上もただの人なんだったら、何でおいらは姿を変えたり出来たのさ。小丸だって、おいらから妖気を感じるって言ったじゃないか」

 これには羽衣が、眉間に皺を寄せて黙りこんだ。しばしの沈黙の後、はぁ、と大きくため息をつく。

「……多分の、それこそ……呪いよ」

「誰のよ。女子の? しつこくない?」

 小丸が嫌そうに言う。が、羽衣は首を振った。

「外道丸じゃな。純粋な、怒りの呪いじゃ」

 ぎょ、と小丸が目を剥く。

「な、何で? 女子に向くのはわかるけど、何で自分の子に?」
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