あやかしあやなし
 庵に帰ってからしばらくの間、惟道は考え込んでいた。

「どうしたのさ。何か考え事?」

 小丸が芋を掘り起こしながら聞く。

「ここんとこ、何か考え込んでるじゃん」

「……迦楼羅というのを知っておるか?」

 唐突に聞き返され、小丸はきょとんとする。

「煩悩を喰らう霊鳥らしい。不動明王が背負う焰を迦楼羅焰と言って、不浄を焼き尽くす焰なのだそうだ」

「ふーん。難しいこと知ってるねぇ」

「以前章親のところで読んだ書物にあったのだ」

 言いつつ惟道の視線は、井戸の側で掘り起こした芋を洗っている鬼っ子に注がれる。

「烏天狗と迦楼羅は同じとする説もあるそうだ」

「ふーん?」

 話の意図がわからず、小丸は適当に相槌を打ちながら芋を入れた籠を持ち上げた。そこで、ふと振り返る。

「……いやいや惟道。何か変なこと考えてるんじゃないだろうね?」

 無言の惟道を見、次いでその胸元に目を落とす。そしてさらに、小丸の目は少し向こうの鬼っ子へ。

「あいつを烏鷺の餌にしようとか思ってない?」

「餌にはならんだろう」

 考えることもなく、さらっと答えるということは、そのようなことを考えていた、ということだ。

「ただ、あ奴の負の部分を取り除けるのではないかと思ったのだ」

「負?」

「羽衣の話では、奴の人ならざる力は負の力、とのことだったな。ということは、迦楼羅焰で焼き尽くせるのではないか?」

「ちょっとちょっと惟道。怖いこと言わないでよ。鬼っ子を焼き殺そうっての?」

 小丸がどん引いて言う。が、惟道は少し首を傾げた。
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