あやかしあやなし
「……そうだ。あの烏天狗は何処に行った?」

 ふと思いついたように、惟道が顔を上げた。誰、という顔の小丸と目が合う。

「雛を連れてきた奴だ」

「ああ、烏兎」

 ぽん、と手を叩いた小丸だが、そのまま首を傾げる。

「あれ、そういえばそうね。そういや怪我が治ってから見てないな」

「俺達が都に京に行っている間に帰ったのであろうか」

「帰るっても、鞍馬は危険だろ。愛宕山かな」

 小丸が、ちょいと西を指す。

「天狗の本拠地は色々あんのよ。あっちのほうにある愛宕山にもあるはず」

「愛宕山……というのは、確か火にまつわる山のはずだ」

「あ、そういえばそうね。火伏せの神性の総本山だ」

「打ってつけではないか。そこであれば、上手くいくやもしれぬ」

「とはいえ、その術を誰が使うのよ」

「……」

 ここには人ならざるものはいるが、術師はいない。

「そもそも烏天狗が皆そういった術を使えるとは限らんでしょ。ていうか、烏天狗の術とも限らんでしょ」

「迦楼羅と烏天狗が同じとすれば可能性ではないかと思ったのだ」

「烏天狗が火を吹くところなんて、おいらは見たことないよ。それにそれは雛が惟道の中から出る方法にはならんでしょ」

 呆れ気味に小丸が言う。惟道が悪鬼であれば、中から惟道を焼き尽くして出て来られそうだが。

「だったら鬼っ子に入れればいいのではないか?」

 良いことを思い付いたように、惟道が手を打つ。
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