あやかしあやなし
「おぬしたちに来てもらったのは他でもない。烏鷺の様子を見ることもあるが、鬼っ子をどうにかしてやろうと思うての」

 僧正坊が言うには、三年と少し前、ここで僧正坊を降ろした(というか勝手に降りた)惟道に散々打ちのめされた後、罰として鞍馬寺に預けられた男は、荒くれ者の集まる鞍馬山で厳しい修行に明け暮れるうち、己の甘さを思い知ったそうだ。
 さらに奥の院にて烏天狗とも交流し、色々教えを受けるうちに、人ならざるものに対する心根も変わった。と同時に元々持っていた才能も開花し、今では寺の僧兵たちも一目置く存在となったそうだ。

「寺の務めよりも烏天狗たちと修行するほうが性に合っておるようだ。考えてみれば陰陽寮も術系だしの。術の才は吉平様も認めてくださっておったし。ただその才を伸ばしてくれたのが、以前は下に見ていた物の怪であったことが、私の考えを根本から変えたのだ」

 すっきりとした表情で言う男は、確かに以前のような居丈高な感じもなく、人外である小丸を蔑むような目で見たりもしない。小丸や鬼っ子に対しても纏う気が以前とは変わったため、すぐにはわからなかったのだ。

「そんな日々を過ごすうち、鬼っ子のことが気になってな。そもそも鬼っ子は三条河原をうろつく浮浪児だったし、そこでも群れてはおらなんだ。傍から見たら、少し年が行っているから子供の群れには入っていないだけかと思うておったが、姿が異形だからだったんじゃな」

 言いながらも、男はちょっと不思議そうに鬼っ子を見る。三年経っているのに、鬼っ子の姿はむしろ幼くなっているからだろう。
< 126 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop