あやかしあやなし
「こいつはおぬしといる間は、無理をして姿を変えておったようだ。が、聞く限りその前からずっと大人のふりをしておったのか。浮浪児なれば、子供のほうが施しなど受けやすいような気がするが」

 珍しく惟道が補足しつつ、少し首を傾げた。

「普通の子供だったらそうかもしれない。だけど異形の子供なんて舐められる。それこそ浮浪児に寄って集って滅多打ちにされる。殺されそうになって、姿を変えた」

 小さく言う鬼っ子の肩を、章親がぽんぽんと優しく叩いた。膨れ上がりそうになった負の感情が、それだけで霧散する。

「弱い物の怪は、たまにここに逃げて来たりするんだよね。初めに会ったのが僕だったら助けてあげられたんだけどな」

「物の怪が陰陽師の元に逃げ込むのも命懸けじゃないの?」

 小丸が微妙な嫉妬の視線を送る惟道を横目に見つつ、にやにやしながら章親に言った。

「この屋敷は空気が他より随分綺麗じゃから、そんな酷いことをする人間などおらぬと物の怪にはわかるじゃろ」

 かかか、と僧正坊が笑い声を上げる。そして、ぱん、と手を打った。柏手の音が、綺麗に響く。

「うむ、やはりここでやれば間違いなかろう」

 そう言って、僧正坊は男を促した。

「我ら烏天狗がやると、人には強すぎるやもしれぬ。何せおぬしは、まだ子供じゃしの」

 言いつつ鬼っ子の後ろに僧正坊が回り、前に男が立つ。男が首に掛けていた大きな玉の数珠を外して腕に巻き付け、じゃらじゃらと鳴らしながら呪を唱えだした。
 惟道が章親を引っ張り、鬼っ子から離す。魔﨡も錫杖を構えて章親の前に回り込んだ。
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