あやかしあやなし
「大丈夫だよ。この子は僕が看病するから」

「いや、駄目だ。こ奴はまだどういう状態かわからん。どういう状態で目覚めるかわからぬものを、章親の側に置いておくことはできぬ」

 光の速さで、惟道が章親の申し出を却下する。横で魔﨡も大きく頷く。章親の身を案じることに関しては、この二人は驚くほど考えが一致する。

「いやいや、僕だって陰陽師なんだから、この子が恐ろしいものになったらわかるよ」

「章親の力を信じぬわけではない。……まぁ万が一のことがあれば、魔﨡に叩き潰して貰えばよかろうが……」

「うむ。じゃがそれをして我が章親に嫌われても嫌じゃしなぁ」

 章親の主張も、過保護二人は聞く耳を持たずに物騒な意見の交換をしている。こうなると、むしろ鬼っ子をここに置いておくほうが危険なような。

「ではこの者は、こちらで預かるとしようかの」

 過保護二人に若干引いていた僧正坊が口を挟んだ。ぴく、と相変わらず惟道にべったりくっついている烏鷺が反応する。

「烏鷺の恩もあるしの。烏鷺はまだこ奴に思うところもあろうから、またしばし惟道の元に厄介になるか。もう中に入る必要もない故、飛ぶ練習でもしておれ」

 びゃ、と嬉しそうに鳴き、烏鷺は惟道に体を擦り付けた。

「鬼っ子も、都育ちとはいえ最早寄る辺ない身。私も鞍馬で生まれ変わることが出来た故、共に鞍馬寺で暮らそうと思う。あそこなれば都人よりも物の怪に慣れておる。少々気性が荒いが、万が一鬼っ子が鬼のように暴れても心配なかろう」

 うむ、と僧正坊と頷き合い、男が改めて姿勢を正して惟道らを見た。
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