あやかしあやなし
 驚いたが、はた、と気付く。声が若干普段と違う。どこか遠くから響いているようだ。

「……影か」

『さすが惟道。わかっちゃう?』

 章親が、へら、と笑う。実体ではなく、影を作って小丸に連れてきて貰ったのだろう。物の怪の速さでは実体はついて行けないが、影であれば気の塊のようなものだから、いわば空気のようなものだ。

「とはいえ、こんな遠くまで気を飛ばして大丈夫なのか」

『大丈夫だよ。実体は魔﨡がしっかり守ってくれてる』

 影を作るにもいろいろあり、姿形だけを映すものであれば髪の毛などに術をかけるだけで、実体に影響はない。そう難しい術ではないので一般的にはこちらなのだが、あくまで見た目だけを立体化したものなので、意志疎通はできないし、もちろん今のように話すことなどできない。

 今回のような、ほぼ実体のまま空気のようになるのは、言ってしまえば魂を抜くようなもの。実体のほうは抜け殻となり、この影が戻るまで意識はない。実体は無防備な状態だ。
 だが章親の御霊である魔﨡がついているのであれば安心だろう。何せ龍神だ。最強の護衛である。

「なかなか面白いお客人じゃのぅ」

 羽衣が、ひょいと惟道の後ろから顔を出す。

「都の陰陽師かえ。……ふふ、懐かしいの」

 意味ありげに笑い、中へ促す。円座に座るなり、小丸が身を乗り出した。

「都の物の怪狩りはほんとだよ。ほら、いっつも作ったもの引き取ってくれる飯綱、あそこもいなくなっちゃってるしさぁ、全然物の怪の気配がないもの。異様だよ~」
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