あやかしあやなし
 どうやら都の物の怪狩りは、人ならざるもの全てを敵に回しているようだ。物の怪だって悪いものばかりではない。まして京の都は千年魔都なだけに、物の怪なしでは成り立たないのだ。このままでは神の加護もなくなろう。四神相応の地の意味がない。

「鞍馬の天狗が言うにはね、こっちには来てないって。まぁ鞍馬に行くには都を通らないとだし、望みは薄いかな、とは思ってたんだけど。ちょっと遠いしね」

「結局行方知れずか」

「そうでもない。化野からなら、愛宕山に行ったんじゃないかって」

 えへん、と胸を張る小丸とは裏腹に、惟道はきょとんとする。元々惟道は、そう積極的に動き回るほうではないので、地理にも疎いのだ。

『愛宕山は全国にあるけど、京の愛宕山といえば化野の奥にあるんだ。愛宕山にも天狗はいるし、鞍馬まで行くよりもよっぽど近い』

 章親の説明に、ふーん、と呟き、惟道は立ち上がった。

「なら、すぐにでも行かねば」

「待ちなされ」

 すぐにでも出ていく勢いだった惟道の袖を、間髪入れずに羽衣が掴む。おっとりしていそうに見えて、意外な素早さだ。

「愛宕山に行ったって、すぐに見つかるとは限らんぞ。それよりも先に、居場所を見つけようじゃないか。近くにおるなら、我にもわかるかもじゃ」

 言いつつ、小丸に向かって顎をしゃくった。心得たもので、小丸はささっと奥に走り、水盆を持ってくる。

「こういう術は、本来陰陽師の得手なんじゃがのぅ」

 羽衣が、どこからか出した木の葉を振ると、それはたちまち鈴のついた小さな錫杖になる。

「烏天狗・烏兎の行方を教えてたもれ」

 水盆の上で、しゃらしゃらと錫杖を振る。りんりん、と涼やかな音が響いた。
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