あやかしあやなし
「う~~~ん……」

 りんりんりん……と鈴の音だけが水の上を滑っていく。しばし水面を見つめていた皆の視線が、徐々に錫杖を振っている羽衣へ。

「……わからぬわ」

 全員の視線が己の顔に集まったところで、羽衣は錫杖を下ろした。がく、と小丸が大きく項垂れる。

「同じ狐だったら、ある程度はわかるのじゃがなぁ。丸っきり違う種じゃし、その者の羽でもあれば別じゃが」

「羽か。そういったものは……」

 惟道が、きょろきょろと己の身体を探る。何かついてないかと思ったのだが、生憎惟道は触れてもいないのだ。
 が、ふと思い付いたように顔を上げた。

「そうだ。穢れを追えばどうだ? 化野から愛宕山までに、大きな穢れがあるかどうか」

「……あ、なるほどの」

 かつて惟道の身の内にいた鬼は、惟道の血を辿っていろいろなところに移動していた。穢れというのは結構な目印なのではないか。

 羽衣も頷き、再び水盆を覗き込むと、水盆に浮かび上がった景色の上で、しゃらしゃらと錫杖を振っていく。りんりんりん、と澄んだ音を響かせていた鈴が、ある一点の上で鳴らなくなった。

「おや、意外に近いではないか」

 水盆に映し出された場所は、惟道たちの寺から愛宕山のほうに少し入った辺りだ。

「行こう」

 がば、と立ち上がる惟道の袖を、またもや素早く羽衣が掴む。

「地理に疎いおぬしが、ぱっと見ただけでここがどの辺りかわかるのか? 山の中なぞ皆同じような景色じゃし、烏兎とて結界を張っておるやもしれぬ」

「結界を張っておったら、このような術で見つけることもできぬであろう」
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