あやかしあやなし
『知ってるからこそだよ! 惟道が器になりやすいからこそ、そんな危ないことさせられないって言ってるんだ!』

 珍しく、章親が声を荒げた。少しだけ、惟道の目が見開かれる。

『まして烏天狗は人に近い上に力が強い。人に近いってことは同化しやすいってことだ。しかもかなり妖力が強いから、悪くすれば人は取り込まれてしまうよ』

「その辺のところは、道満殿に教わった」

「道満?」

 ふと、烏兎が反応した。

「蘆屋道満か? おぬし、道満を知っておるのか」

「道満殿は、俺の育ての親だ」

「そ、そうじゃったのか」

 心なしか、烏兎の表情が緩む。もっとも鳥なので、そう表情がわかるものでもないのだが。

「道満にはその昔、世話になったのじゃ。山から降りては都の道満の屋敷に入り浸っておった。うむ、楽しかったのぅ」

 しみじみ言う。おそらくまだ道満も若く、都にいたころの話だろう。
 それにしても、道満は若い頃からこのような烏天狗と交流があったとは。さすが、天下の安倍晴明と並び称されるだけのことはある。

「道満が播磨に行ってしまって、どうしておるかと思っておったが」

「俺は播磨での暮らししか知らぬが、十分良い暮らしだったぞ」

「そうか、それなら良かった」

 歳故か(はたして烏兎がいかほどの歳かはわからないが)、烏兎が目頭を押さえる。が、ふと気付いたように烏兎は顔を上げた。

「うむ? おぬし、道満に育てられたのに、何故安倍の者と懇意なのじゃ?」

 きょろきょろと、惟道と章親を見比べる。

「道満にとって、安倍の者なぞ敵ではないか」

「そう思っていたのは道仙だけよ」

 ふん、と惟道が鼻を鳴らした。道仙の話になると、途端に惟道の態度が変わる。
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