あやかしあやなし
『あっ酷いです~。それは偏見というものですよ~』

 すかさず毛玉が、びょーんと跳ねて惟道に引っ付く。

「お前とて悪戯が過ぎて長く封じられていた。軽い悪戯程度でも、改心するにかなりの刻を要するということぞ」

 毛玉の場合は忘れ去られていたというのも大きいのだが。

「魔﨡。こ奴、章親を騙くらかそうとしておるぞ」

「そのようじゃな。……いい度胸じゃ」

 惟道に促され、魔﨡が一歩前に出る。口角は上がっているのだが、ふっふっふっ、という擬音がぴったりな、かなり物騒な雰囲気だ。

「我が先ほど何と言ったか、わかっておらんようじゃなぁ。嘘偽りを申さば、貴様なぞ跡形もなく打ち砕いてくれよう、と言ったはずじゃ」

 そこまでは言っていないが、確かにそういう意味だったのだろう。

「我の言い付けを守らなかったこと、とくと後悔するがいい」

「まっ……」

 章親の制止を掻き消すほどの唸りを上げて、錫杖が炸裂した。鬼っ子が吹っ飛ぶ。

「安心せぃ。潰してしもうたら章親が聞きたいことも聞けぬであろ。我とて章親を困らすことをするつもりはない。軽く叩いただけじゃ」

 綺麗な弧を描いた錫杖をそのまま肩に担いだ魔﨡が言う。が、その場の誰もが固まったまま動けない。
 『軽く叩かれた』鬼っ子は、決して狭くないこの部屋の隅まで吹っ飛んで、壁に激突して落ちた。そしてその壁は、うっすらへこんだような。

「……鬼のくせに、やわな奴だな」

 一人、特に驚くこともなかった惟道が、ぼそ、と呟いた。
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