あやかしあやなし
「いやいや、動かないしっ! あれが普通の反応だよ」

「俺の中にいた鬼も、魔﨡に叩きのめされても動いておったぞ」

『鬼皆が皆、そんな頑丈じゃないです~』

 章親と毛玉の訴えに、惟道と魔﨡は顔を見合わせた。だがこの二人は章親に害なすものには露ほども情けをかけない。鬼っ子に駆け寄ろうとする章親を制し、惟道が足早に近付いた。

「起きろ」

 乱暴に、伸びている鬼っ子の胸ぐらを掴んで揺さぶる。またも駆け寄ろうとする章親の腕を、魔﨡が掴んだ。

「うう……」

 船酔いしそうなほど揺さぶられて、ようやく鬼っ子が目を覚ました。

「嘘偽りを申すと容赦せぬ。さぁ、さっさと己のことを喋らぬか」

 胸ぐらを掴んだまま、間近で凄む惟道に、鬼っ子は顔を引き攣らせた。子供とはいえ鬼に対して凄むなど、およそ人の所業ではない。人が凄み、鬼がふるふると震えている。

「……お前、鬼にしては不完全だな」

 じろじろと鬼っ子を見ていた惟道がぽつりと言ったことに、章親も同意した。

「あ、うん。それは僕も思ってたよ。そんなに異形でもないし、持ってる気だって、そう悪くない。無理して化けないでも、耳を隠しておけば人と変わらないよ」

 鬼といえば真っ先に思い浮かべる角がないのだ。

「こんななりで、鬼と言われてもな……」

 言いつつ、これまた遠慮なく惟道は、わしわしと鬼っ子の頭を触りまくった。ふと、一点で手を止める。

「……これか」

 ちょうど頭頂部の髪を掻き分けると、僅かに盛り上がった場所がある。だがそれも瘤程度のものなので、髪で完全に隠れている。
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