あやかしあやなし
「おいらのことっていっても、何が知りたいのさ」

 それでも素直に言うことをきくのは癪なので、つん、とそっぽを向いたまま偉そうに言う。が、その途端、錫杖が鼻先に突き出された。

「何じゃ、その態度は。貴様、まだ己の立場というものがわかっておらぬようじゃな?」

 魔﨡に凄まれ、ぎらりと光る槍の穂先のような錫杖の先を見つつ、鬼っ子は震え上がった。

「ちょっとちょっと、穏便に。子供相手にそんな凄んだら可哀想でしょ」

 ひょい、と錫杖を鬼っ子から外しながら、章親が仲裁に入る。だがそんな優しさは、惟道と魔﨡に、ばっさりと斬り捨てられる。

「甘いぞ、章親。大体物の怪の見た目など信用ならん。これでも随分な年寄りかもしれぬ」

「そうじゃぞ。章親の優しさにつけ込むのが物の怪じゃ。現に悪さをしておったのだし、このようなもの、そもそも章親の御前に出ること自体がおこがましい。その辺りからわかっておらぬ」

 先の惟道はともかく、魔﨡の言い分はめちゃくちゃだ。

「もう、ちょっと二人とも、黙っててよ。そんな端から話の腰を折ると、話そうにも話せないよ。向こうの部屋に引っ込んでおいて」

「「ならん。こんな何をするかわかったものではない物の怪と章親を二人になどできるものか」」

 惟道と魔﨡の声がぴったり重なる。章親に関することにつけては気の合う二人である。ちなみに部屋には吉平もいるのだが、二人の頭にはないらしい。
 章親は頭を抱えたが、これ以上言っても無駄だろう。この二人の自分に対する心配性は、並みではないのだ。
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