あやかしあやなし
「……仕方ない。あ、この二人のことは気にしないで。でね、君はそもそも鬼なんだよね? でも普通の鬼より人に近いのかな。あんまり禍々しさも感じないし」

 ずい、と前に出、後方の二人はいないものとして、章親は鬼っ子に話しかけた。鬼っ子は少しきょとんとした後、くしゃ、と顔を歪める。

「……嘘だよ。おいら、禍々しいって捨てられたんだから」

 ん、と見る章親の前で、鬼っ子はしょんぼりと項垂れた。だがこの時代は、捨て子など珍しいことではない。三条河原には行き場のない浮浪児がうようよいるし、惟道だって元は捨て子だ。

「別に禍々しくないよ? 口が裂けてるわけでもないし、角だって、ほぼ髪で隠れるじゃない。あとはちょっと爪と歯が鋭いだけかなぁ? 他に何か、人とは違うことができるの?」

 ぽんぽん、と鬼っ子の身体を触りながら言う。その躊躇いのなさに、鬼っ子のほうが驚いた。

「お、おいら、穢れてるから。穢れがつくよっ」

 少しのけ反りながら言う。が、章親は、あはは、と明るく笑った。

「大丈夫だよ。別にそんな穢れは感じないし。さっき浄化できないって思ったけど、それは穢れてるわけじゃなくて、君の気のせいだったと思うよ」

「気?」

「うん。さっきはほら、君も敵愾心剥き出しだったし。攻撃性の強い気っていうのかな。まだ心を開いてくれてなかったから、そう簡単に僕の気も受け入れなかったんだよ」

「は。馬鹿じゃのぅ。章親の気を拒むなど、愚の骨頂じゃ」

 心底馬鹿にした目で、魔﨡が言う。その横で、惟道も大きく頷く。ぎ、と二人を睨み、章親はますます膝を進めて鬼っ子ににじり寄った。
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