あやかしあやなし
「あっ!」
魔﨡の手から弧を描いて動いた錫杖は、初めこそしゃらしゃらといつも通りの綺麗な音を響かせていたが、魔﨡から離れるにつれて、じゃりじゃり、という不気味な音に変わった。もっともそこまで悠長に音を聞いていられたわけではなく、じゃり、となった瞬間には青年の身体に炸裂していたのだが。
「うげぎゃあー!」
妙な叫び声を上げて、青年が転がる。錫杖に何やら黒い妖気が煙のようにまとわりつき、それが青年の身体にも絡み付いている。
「惟道っ。我の錫杖に何をした?」
魔﨡が惟道から錫杖を奪おうと手を伸ばす。か、章親がそれを制した。
「ちょっと待って。危険かもしれない」
「我は龍神ぞ? 何の危険がある」
「魔﨡は強すぎて、ちょっと今のあの気にどう作用するかわからない。魔﨡が怪我したら困るし」
んむ、と魔﨡が引き下がる。章親が自分を心配しているのがわかったのだろう。
「惟道!」
章親は錫杖を握ったまま青年の前に仁王立ちしている惟道の背に叫んだ。気に同調してか、惟道の髪が不自然に跳ねる。
『身の程をわきまえぬ小童め。我らよりも偉いというのなら、己で止めてみるがいい』
惟道のものとは違う声が、惟道の口から漏れる。どうやら何物かが惟道を操っているようだ。
いや、正確には操っていないのかもしれない。男を打ち据えたのは惟道だ。自分でも、何を入れても意識が飛ぶことはないと言っていた。完全に乗っ取られることはないということだ。惟道の怒りに同調した何か、といったところか。
魔﨡の手から弧を描いて動いた錫杖は、初めこそしゃらしゃらといつも通りの綺麗な音を響かせていたが、魔﨡から離れるにつれて、じゃりじゃり、という不気味な音に変わった。もっともそこまで悠長に音を聞いていられたわけではなく、じゃり、となった瞬間には青年の身体に炸裂していたのだが。
「うげぎゃあー!」
妙な叫び声を上げて、青年が転がる。錫杖に何やら黒い妖気が煙のようにまとわりつき、それが青年の身体にも絡み付いている。
「惟道っ。我の錫杖に何をした?」
魔﨡が惟道から錫杖を奪おうと手を伸ばす。か、章親がそれを制した。
「ちょっと待って。危険かもしれない」
「我は龍神ぞ? 何の危険がある」
「魔﨡は強すぎて、ちょっと今のあの気にどう作用するかわからない。魔﨡が怪我したら困るし」
んむ、と魔﨡が引き下がる。章親が自分を心配しているのがわかったのだろう。
「惟道!」
章親は錫杖を握ったまま青年の前に仁王立ちしている惟道の背に叫んだ。気に同調してか、惟道の髪が不自然に跳ねる。
『身の程をわきまえぬ小童め。我らよりも偉いというのなら、己で止めてみるがいい』
惟道のものとは違う声が、惟道の口から漏れる。どうやら何物かが惟道を操っているようだ。
いや、正確には操っていないのかもしれない。男を打ち据えたのは惟道だ。自分でも、何を入れても意識が飛ぶことはないと言っていた。完全に乗っ取られることはないということだ。惟道の怒りに同調した何か、といったところか。