あやかしあやなし
「そなたには、鞍馬の御山に行って貰おう。何、鞍馬天狗の元へ行けと言っているのではないよ。ちゃんと人のいるところだ」
ひく、と青年の顔が引き攣る。
「よ、吉平様。私に、僧になれと……」
鞍馬寺である。確かにちゃんと人の世界だし、大きな寺なので山奥のわりに人は多い。
が、場所柄故か荒くれ者が多い。大部分は僧兵なのだ。
「いや、あくまで行儀見習いとして。もちろんお前様が希望すれば、僧になるのも良いと思うがね。もしかすると、そっちのほうが合っておるやもしれぬし」
「お、お待ちくだされー!」
部屋を出ていく吉平の後を、青年が蒼白になって追っていく。同時に、がらん、と音がした。見ると、錫杖が転がっている。
「惟道!」
章親の声に振り向いた惟道は、姿は特に変わっていないが、相変わらず黒い妖気を纏っている。中に入っているものは、まだ出ていないようだ。
「ていうか、惟道、元々雛も入れてるのに……。複数降ろして大丈夫なの?」
『は、そういえばそうじゃ。すまぬ、大事ないか』
惟道が気付いたように、己の身体に視線を落とした。若干声が不自然に響いているので、中に入っているものが惟道に言っているのだろう。
『わしとしたことが、あまりの怒りに我を忘れてしもうた』
ひく、と青年の顔が引き攣る。
「よ、吉平様。私に、僧になれと……」
鞍馬寺である。確かにちゃんと人の世界だし、大きな寺なので山奥のわりに人は多い。
が、場所柄故か荒くれ者が多い。大部分は僧兵なのだ。
「いや、あくまで行儀見習いとして。もちろんお前様が希望すれば、僧になるのも良いと思うがね。もしかすると、そっちのほうが合っておるやもしれぬし」
「お、お待ちくだされー!」
部屋を出ていく吉平の後を、青年が蒼白になって追っていく。同時に、がらん、と音がした。見ると、錫杖が転がっている。
「惟道!」
章親の声に振り向いた惟道は、姿は特に変わっていないが、相変わらず黒い妖気を纏っている。中に入っているものは、まだ出ていないようだ。
「ていうか、惟道、元々雛も入れてるのに……。複数降ろして大丈夫なの?」
『は、そういえばそうじゃ。すまぬ、大事ないか』
惟道が気付いたように、己の身体に視線を落とした。若干声が不自然に響いているので、中に入っているものが惟道に言っているのだろう。
『わしとしたことが、あまりの怒りに我を忘れてしもうた』