あやかしあやなし
『ふふ、さすがは晴明の孫。わしのことも正しく理解しておるようじゃの。まぁそう畏まらずともよい』

 にこりと笑う。笑ったのは僧正坊なのであろうが、如何せん今の見てくれは惟道である。惟道がこんな風に笑うことなどないため、章親は思わずまじまじと彼を見た。

『この者は、おぬしの家人かの?』

 そんな章親の様子は気にも留めず、僧正坊は己の胸元を叩きながら言う。

「あ、い、いえ。惟道は友達で……。今は化野の和尚さんのとこにいるんです」

『ほぅ? ああ、あの和尚か。奴もまだまだ元気のようじゃの』

 はっはっは、と明るく笑う僧正坊に、やはり章親は妙な目を向けてしまう。惟道が笑っているのだ。喜ばしいことなのだろうが、違和感が否めない。

「おぬしも和尚と知り合いなのか」

 不意に惟道が真顔になり、口を開いた。だが次の瞬間には破顔し、頷きつつ同じ口を開く。

『おお、あそこは物の怪たちの憩いの場所じゃ。大抵のものは知っておる』

「ちょっと。ちょっとごめんなさい。あの、惟道と僧正坊様は一緒に喋らないでくれるかな。こっちは妙な感じがして落ち着かない……」

 おずおずと手を上げて、章親が割って入った。
 真顔になったときが惟道なのだろう。どっちが喋っているかはわかるのだが、だからといって能面惟道の百面相を冷静に見てはいられないのだ。小丸など、あからさまに身を乗り出して、笑いながら惟道を凝視している。
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