惚れたら最後。
SIDE 琥珀



数日後、無事大学の入学式に参加することができた。



「せっかくだからあそこで写真撮ろうぜ」

「えー……」

「なんで嫌がるんだよ、ほらせっかくだから!」



式が終わったので帰ろうとしたら、式に来てくれた拓海さんがスマホを片手に指示を出す。

どうやら『入学式』の看板の横に並んで写真を撮りたいらしい。



「もうちょっと左に寄って」

「えー、もういいじゃん。帰ろうよ拓海さん」



しぶしぶ従ったのはいいものの、何枚も取り直すから恥ずかしくなってきた。

その場から離れようとしたその時。

ドンッ、と肩が誰かにぶつかってしまった。



「あっ、ごめんなさい」

「こっちこそごめんなさい!っ……!」



ぶつかった相手と顔を見合わせると、その子は自分より背の低い女の子だった。

ふわっとしたボブにくりっとした大きな目。

彼女は私を見つめると顔を真っ赤にして固まってしまった。



「大丈夫ですか?」

「え、あ……はい!あの、えっと、新入生ですか?」

「はい」

「うそ、大人っぽい……じゃなくて、そうなんですね!どこの学部ですか!?」

「経済学部です」

「わっ!一緒の学部だ!あの、よかったら連絡先交換しませんか?」



頬を紅潮させて、緊張したがら話しかけてくるその子にかわいいなぁ、とほっこりした。

私はポケットからスマホを取り出した。



「いいですよ、えっとお名前は?」

「あっ!そうだ名前……安藤澪あんどうみおです、よろしくね」

「私は相川杏、です」



私は本名を名乗らず、偽名を名乗った。

琥珀の英名、『アンバー』からとってアン。

単純だけど本名をそのまま使うよりは良いと思う。



「杏ちゃん!よろしくね!」



澪、と名乗った彼女は笑顔を弾けさせ『杏』に握手を求めた。

明らかに良い人そうな彼女に嘘をつくのは少し心苦しいけど、とにかくいいキャンパスライフが送れそうだと笑った。
< 294 / 312 >

この作品をシェア

pagetop