【短】アイを焦がして、それから
*
僕はファンじゃない。
ひとりよがりな味方でもなくなった。
残された欲を、どうしてくれよう。
「撮影会ごっこ」がなくなって一週間が経った。来週から夏休みに入る。
一人きりの教室の片隅。
窓を締め、蝉の鳴き声を遮断する。現像した写真を並べながらぼんやり眺めた。
右から左へ視線を流していくと、一番左端の写真を通しすぎた。間を空けて置いた一冊の雑誌に留まる。
その表紙には「tulle」というタイトルの下、表紙の中央に大きく、彼女───アイドルの“服部まろん”が微笑んでいた。
僕の写真と見比べなくてもわかる。プロが撮った画は、彼女を存分に際立たせる。
オレンジっぽいアイメイクに、大粒のラメ。ぷっくりとした唇に、わざとかすらせたワイルドなリップグロス。肌の白さは相変わらず、粉雪のよう。
これが彼女の当たり前なら、中古のカメラではかっこ悪く映るはずだ。
でも。
だけど。
左端の写真を手に取る。
ジャキリと刃を突き立てた、始まりの写真。
強い眼光とは裏腹にやるせない表情。蜜を断ち切った華奢な手と、淡くかぶさる髪の影。
この未熟さも、僕は、たまらなく好きなんだ。
片っぽが終わりにしたって、僕はまだ終わってない。さよならをしたのがあっちなら、こっちから会いに行けばいい。
愛すればいい。