【短】アイを焦がして、それから






僕はファンじゃない。

ひとりよがりな味方でもなくなった。


残された欲を、どうしてくれよう。




「撮影会ごっこ」がなくなって一週間が経った。来週から夏休みに入る。



一人きりの教室の片隅。

窓を締め、蝉の鳴き声を遮断する。現像した写真を並べながらぼんやり眺めた。


右から左へ視線を流していくと、一番左端の写真を通しすぎた。間を空けて置いた一冊の雑誌に留まる。


その表紙には「tulle」というタイトルの下、表紙の中央に大きく、彼女───アイドルの“服部まろん”が微笑んでいた。


僕の写真と見比べなくてもわかる。プロが撮った画は、彼女を存分に際立たせる。

オレンジっぽいアイメイクに、大粒のラメ。ぷっくりとした唇に、わざとかすらせたワイルドなリップグロス。肌の白さは相変わらず、粉雪のよう。

これが彼女の当たり前なら、中古のカメラではかっこ悪く映るはずだ。


でも。
だけど。


左端の写真を手に取る。


ジャキリと刃を突き立てた、始まりの写真。

強い眼光とは裏腹にやるせない表情。蜜を断ち切った華奢な手と、淡くかぶさる髪の影。


この未熟さも、僕は、たまらなく好きなんだ。


片っぽが終わりにしたって、僕はまだ終わってない。さよならをしたのがあっちなら、こっちから会いに行けばいい。



愛すればいい。


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