Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

ひどい難産で時間はかかったけれど、無事に誕生したのは男の子。女王陛下の第一子となる第一王子だった。

早速ゲオルグ王太子殿下も祝意を表し、以前の宣言通りに次の王太子に指名する旨を発表。先手必勝で次々と既成事実を固めていく手腕はお見事としか言いようがない。

おべっか使いのバカ臣下どもも、我先にと祝いを持って駆けつけたから王宮は大騒ぎだった。
世間も女王陛下のご出産に祝賀ムードに包まれた。レイと名付けられた王子は大人気で、連日連夜マスコミに報道される過熱ぶり。
写真集まで発売って……やり過ぎだろ。

ただ、あの王太后の動きがご懐妊発表以降何も無いのが不気味だ。
正確には王太后を操る兄大臣が……かな。
今のところ他の貴族と同じように祝っているけれど、あくまで表向きだろう。内心は穏やかでないはずだ。

『見て、アキト。レイが笑ったわ』

穏やかな陽射しのなか。お気にいりの庭園でレイ王子を沐浴させていた女王陛下は、今は夫となった叔父さんに微笑んだ。
さすがに正式な王位継承者となったレイ王子……王位継承第二位と認められた……の父親が身分なしはまずいだろう、と貴族議会により明人叔父さんが正式な王配と認められ、殿下の称号も与えられた。ま、便宜上ではあるけれど。日本のとある有力な一族の養子となっての上だけどね。

『ああ、レイは外が好きか』
『ふふ、レイが大きくなったら3人でピクニックに行きたいわね……わたくしも料理を勉強してお弁当を作りたいわ。レイには“母親の味”を覚えていてほしいもの』

一見ほのぼのとした会話に聞こえるけれど……ぼくには悲しい夢に思えた。

女王陛下は……きっと気づいてる。ご自身の命が長くないと。
だから、少しでも息子と思い出を作りたいのだと。

そして、それは後に現実になってしまうんだ。



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