Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
だから、お父様は嫡男のぼくがオーベン公爵家の継承権を放棄するのにあっさり同意したのか。通常ならば猛反対するところを、渋る様子を見せて……あれだけすんなり承知する方がおかしかった。姪のマリアを養女にする話だって……とうに弟のヨーゼフと話がついていたに違いない。結局、何もかもが王太后の手の平の上に過ぎなかったというのか!
女王陛下の御懐妊の出産に反対したのだって。本来ならば一番に祝い全力でサポートしなければいけない立場だったのに。御典医長とともに反対したのは、レイ王子が生まれてはまずかったから。
生まれて13年……ずっとよき父親と夫という顔は、所詮ぼくたちを欺くための仮面に過ぎなかった。
頭を撫でた大きな手も、優しい眼差しも、あのあたたかな言葉たちも。すべてが偽りだったのか……。
信じられなくて一瞬呆然としたけれど、すぐに思い直した。
(ボクは……レイ王子の侍従長だ!誰よりも護らなければならないのは、レイ王子。だから……それを害するならば……たとえお父様でも、敵だ!!)
咄嗟に銃を構えると、お父様は……いや。オーベン公爵ユリウスは、すぐぼくへと発砲した。すんでのところで柱の陰へと逃れたけれど、周囲からの銃撃もある。雨のように弾丸が降るなかで、どう突破口を開くかが問題だ。
素早く周囲を見渡すと、ぼく以外の忠実な王子の臣下はほとんど全滅状態だった。叔父さんは……息子を抱きしめたまま既に動かない。なん十発も銃創がある……もう、駄目だろう。
けれど、それを見た瞬間ぼくの頭のなかに怒りよりも熱い感情が沸騰し、柱から素早く飛び出していた。
躊躇う必要はない! レイ王子を護るために……敵は全て排除せねば!!