Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
けれど、オーベン公爵がすぐ目の前にいるとは思わなかった。
(まずい!)
咄嗟に銃を構えようとしたが、先に引き金を引いたのが公爵だった。もう終わりか、と思った次の刹那。着弾したのはぼくの横にあった柱で。
『走れ!!』
オーベン公爵がぼくにそう小声で命じると、彼は体を反転させて警備兵や近衛たちへ向かい銃を構えた
。
「!!」
考える間もなく、反射的に全力で走り出した。
「カール……王子とともに生きろよ!!」
それが、オーベン公爵……お父様の最期の言葉になった。
(お父様……お父様!)
わざとやつらを欺くために裏切ったふりをして……土壇場でご自身を犠牲にしてぼくらを逃がし
たんだ!涙が出そうになったけど、唇を噛み締めて耐えた。今は、レイ王子を助け脱出することが最優先すべき事柄。たとえ、この身が砕けようとも……お父様の犠牲を無駄にするわけにはいかない!
必死で走り抜け、中庭に着いてようやくお母様と合流できた。お母様は女王陛下を少ない手勢で護っていらした。
昏倒させられた女王陛下を護りつつ、死物狂いで脱出を計った。王宮全体が敵になっていたが、一部の良識がある貴族の協力と……何より大きかったのが、ゲオルグ殿下の助力。お陰で裏門からであるが堂々と脱出できたのだから感謝しかない。
『すまない……結局、私の力が足りずにこんな事態を招いてしまった……』
見送りに来て下さった殿下は心底悔しそうで……
『殿下のせいではございません。これだけのご尽力、感謝いたします』
『カール……いつか、いつか帰ってこられたら……一緒に酒を酌み交わそう』
『はい……』
『……姉上と……レイを……よろしく頼む……』
頭を下げたゲオルグ殿下に見送られ、王宮を脱出した。