Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
「……ずいぶん、色々とありましたよね。レイ王子」
レイ王子が大学在学中に起業したアスフォーコミュニケーションも7年目に入り、ずいぶん大きく成長した。周りは一時的なものだ、と好き勝手言っているが……レイ王子がどんな思いでこの会社を作り、成功させたか微塵もわからないだろう。
数々の大切な人の死を元に生かされた命を、母国のために磨り減らしているのだ。
来るべき革命の資金としてかなり多額の寄付をしているし、基幹システムをはじめとした様々なコンピューターやネットワーク関連には、こちらの有利になるプログラムやバグを仕込んでおいた。
毎日毎晩遅くまで自ら精力的に働く彼も、やはりミルコ女王陛下の息子。彼女と同じ母国を思い、自らの健康を損ねても努力を重ねる。
「……そろそろ、レイ王子を止めてくれる……大切なひとができないものですかねえ。ミレイ王女は論外ですが……」
ゲオルグ殿下……いや、今は即位してゲオルグ国王陛下……は、約束通りに御子は王女ひとりのみだった。彼からは、“これ以上子どもを作るつもりはなく、レイがこちらへ帰国したら王太子へ就ける”旨のメッセージを頂いた。
だが、レイ王子はそのつもりはないようだ。両親を殺し自分も殺されかけた母国に、未練はないだろう。けれど、見捨てるわけにはいかないからこうしてインターネットを通じ少しずつ革命の手助けをしている。やつらの租税回避地(タックスヘイヴン)の裏口座をハッキングして資金を革命派の口座へこっそりプールさせたり……ね。
「さて、今日も頑張りますかあ」
その時、ぼくは知らなかった。
ほんの数日後、レイ王子をとらえる運命の女性が現れることを。
ミルコ女王陛下……Heidenröslein~野ばらのようなその女性は……レイ王子だけでなく、グレース王国を救う女性となっていったんだ。
(Heidenröslein~野ばら……終)


